恋愛経験

童貞のまま30代になったら妖精になれる。
定番のジョークだが、夢があって素敵な言い回しだと思う。


僕もこんな暗くて社交性の無い性格、財産も名誉も何も
持ってないのだから、一生男女交際なんてできない
ものかと思ってた。
そんなもの、アニメやドラマの中だけに存在する架空の
話なんじゃないのと思っていた。


しかし人生どこにチャンスがあるかわからないもの。
22歳のときに何かのはずみで彼女ができた。
初体験も済ませた。


その彼女とは3年後に別れた。
「私は最初からあなたのことを好きだったわけじゃなくて
単にヒマ潰しをしたいときにヒマな人がいただけ」
みたいなことを言われた。
ショックで、それから3週間で10キロ痩せた。


今にして思えば彼女には感謝している。
こんな何の取り柄もない男に恋愛経験の思い出を持たせて
くれて、小さな幸せに満足して進歩を忘れていたあたりで
きっちり終止符を打ってくれた。


1回でも恋愛経験を実体験できたんだからいいやと思ってたけど
何だかんだでその後も何回か経験できた。
いずれも短い夢だったけど。




実はその22歳の経験の前にも、18歳で高校を出た直後に
ちょっとだけ彼女がいたことはあった。
ゲーセンでバイトしてたとき、バイト仲間の女の子の友達が
よくゲーセンに来てた。
その子はゲームとか特に好きじゃないのでゲーセンに来ても
何も遊ばないで帰る。
じゃあ何しに来てるのと思ったら、ゲーセン従業員に
かっこいい人がいるから見に来てたそうだ。
それが僕だって。
え、え、え、何そのエロゲ!?
今となっては遠い昔の10代の頃の話、妄想してたことを
実際の記憶と勘違いしちゃってんじゃないのと自分でも疑い
たくなる、出来過ぎた話。
でも本当にあったこと。


数回デートしたのだが、田舎だし車の免許もまだ持って
いなかったし、何をしていいのかわからない。
共通の趣味も無いもので、なにか手がかりを探そうと
好きなミュージシャンを聞いたら、マドンナだという。
ここで会話終了。
当時の僕にはそういう引き出しが全然なかった。
携帯電話も無い時代。
僕がゲーセンを辞めた後は、連絡を取りたかったら
自宅に電話するしかなく、それも面倒だったので自然消滅。
1ヶ月間に3回ほどデートしただけで終わった。




そう、昔の恋愛は「自宅に電話」というのが最大のネック。
高2のときに「高校生のうちに恋愛とか経験しとかなきゃ
ヤバくね?」みたいなブームが友人との間で起こる。
モテない男が3人集まって、それぞれラブレターを書いたり
告白の電話をかけたり。
僕も隣りのクラスの、会話したことない女子に告白した。
相手は「何でこの人が私に?」みたいに困惑してたけれど
ここはもう力押しだろうと、何度も電話した。
最後には「迷惑なのでもう電話して来ないでください」
と言われた。
友人たちも恋愛は成就しなかった。世の中そんなに甘くない。


当時はバンドブームだったことだし、モテたいのなら
バンドでも組んでおけばよかったのかも。
ブサイクな同級生でもバンドやってる奴はモテてたよ。




こうやって振り返ると、こんな僕にもモテ期は何度かあったようだ。
そしてたぶん、誰にでも平等に与えられるモテ期を、完全に
使い果たしてしまったらしい。
今やもう30代も後半。
最近の恋愛対象はもっぱら二次元。
何の疑いもなく、それでいいんじゃないのと思えるようになってきた。


理想の彼女は南原ちずる。

グッとくるフィギュアコレクション38 南原ちずる 完成品フィギュア 『超電磁ロボ コン・バトラーV』より

グッとくるフィギュアコレクション38 南原ちずる 完成品フィギュア 『超電磁ロボ コン・バトラーV』より