御臨終

祖母が亡くなった。
大正13年生まれ。86歳。
数年前から痴呆症を患い、老人ホームに入所してた。


数日前から体調を崩し、今日から入院。
しばらく様子を見ようかと言ってたら体調が急変して
夕方に亡くなったそうだ。


医者って本当に「御家族を呼んでおいてください」とか言うのね。
もう覚悟はできてたし、そんな場に行ってもどうしていいのか
わからないので、呼ばれたけど行かなかった。
そしたら大阪と東京の姉が両方とも駆け付けてやがんの。
隣り町に住んでるのに行かなかった僕が薄情者みたいじゃないか。
大阪の姉は結局間に合わなかったそうだし。


小さい頃、僕と姉たちの3人は親元を離れて祖母のところに
預けられてた時期がある。
いいかげんな婆ちゃんだった。
麻雀とパチンコが好きで、好きだけど下手くそで借金をしまくって、
親の代から住んでた家を売り払う羽目にもなった。


家を売り払っても、結局息子の弁護士が一戸建てを買ってくれて
特に困らない老後を過ごしてた。
好き勝手に生きてたらいつか報いを受ける。そんな常識が通用しない
ような人生を送り、大勢の子供や孫に見送られて天寿を全うした。


近所で火事があると嬉しそうに自転車を走らせる祖母。
僕も何度か、「火事だ!見に行くよ!」と自転車の後ろに乗せられた。
何の教訓も残してはくれなかったけど、いろいろと愉快な婆ちゃんだった。