祖母が危篤

職場の同僚に、ずっと気になってる女の子がいる。
彼氏持ちなのでどうにも手が出せないけれど、それでも少しずつ
気軽に話せるくらいの仲にはなってる。


そんな彼女が今朝、泣きながら目を腫らせて出勤してきた。
何があったかわからないけど彼氏と何かあった?
チャンスなのか?
しかしそんなときに気の利いた慰めをできるほどの僕でもない。
鉄壁のゴールキーパーの前でうろうろしてたら絶好のこぼれ球が
来たのに、慌てて吹かして外すタイプだな僕は。


なんて声をかけたらこのチャンスに距離を縮められるんだろ。
そんなことを考えてたらうちの親からメール。


入院中の祖母が危ない状態になったので、仕事を早退して
駆け付けられないかとのこと。
なんでこんなタイミングでそんな別の用事が飛び込むかな。
かといって婆ちゃんほっとくわけにもいかないし。


泣き止んでるけど落ち込んだ顔で仕事してる彼女に相談してみた。
「それは今すぐ駆け付けるべきです、残りの仕事はやっておきますから!」
とか言ってくれた。
こんな状態でも他人の心配ができる、いい子だ。


家に電話を入れたら、もう祖母は言葉も届かない状態だし
やっぱり慌てなくてもいい、仕事を終えてから夕方以降でいいとのこと。
定時まで仕事をして、残業は断って帰る。


駐車場へと向かう道で彼女に「婆ちゃんもう99歳だから覚悟はしてたし
やり残したことも無いけど、嫁を紹介できなかったのだけ心残りだ」
とか言ったら、彼女の方から「それじゃ私が今だけ一緒に行って
嫁ですって言いましょうか?」とか言ってくれる。
そのネタ僕も思い付いたけど、今の精神状態の彼女に言うにはちょっと
気持ちを逆なでしそうで言わないでおいたのに。


病院に到着。
祖母は呼吸器を着けられ、いろんな管を繋がれて、心電図が
ピコンピコン表示されてる。
ドラマで見たような光景。
もう話し掛けても全然返事はない。
たまに寝苦しそうに体が動くので生きてはいるのだろうけど。


「全ては仏さんが道筋を決めてくれるんだから、人間が抗うな。
仏さんの思うままにお任せしろ」と祖母がよく言い聞かせてくれてた。
もし婆ちゃんの寿命がここまでと仏さんが決めちゃっているのなら
そこは抗って、もうちょっと長生きさせて欲しい。