松井秀喜引退

松井秀喜という名前を最初に知ったのは1991年の夏。
母校が甲子園に出場、はるばる応援に行ったものの初戦敗退。
「まあ、相手が話題の松井がいる星稜だったしね」
という声で初めて知った。
その試合の松井は大したこと無かったので印象には残っていない。

僕の母校を倒した次の試合、松井は甲子園で1本目の本塁打。
そこからはトントン拍子。
翌年に5打席連続敬遠をされたときは日本中の話題になってた。
個人的には敬遠策は有りだと思う。
みんな人気者の相手の対戦校なんて斬られ役くらいにしか
思っていないのだろうけど、普通の人間が怪獣を倒すためには
奇策だって必要だ。

ドラフトで松井は巨人に入団。
阪神ファンだと聞いてたので、すんなり阪神に決まっていれば
当時の阪神なら新庄・亀山らと合わせて面白い育ち方してただろう。

巨人に決まってから「ゴジラという怪獣の名前でなく、もっと
人間らしいニックネームがいい」という本人の希望を受けて
新聞社が公募。
集まったのが「ゴリラ」「大仏様」「恐竜戦車」など
散々だったのが笑えた。
あの日の新聞は購入したのだが、保存しときゃよかったな。

プロ入りしてからの松井は、「巨人のスター」として周囲が
勝手にイメージ先行させてるようで気の毒だった。
何年目かのキャンプで「高校時代に守った三塁もやってみたい」
と発言しても長嶋監督が「ホントに松井が言ったの？外野一筋で
行くことは同意してるはずだけど」と封じる始末。

MLB移籍しても向こうのフェンスにオレンジ色で「読売新聞」の
広告があるのを見ると、松井の意思で渡米したのかなと
いぶかしく思ってしまう。
あげく日本復帰しないまま引退。
何故か国民栄誉賞。

Sports Graphic Number PLUS 永久保存版 松井秀喜 1993-2012

松井の実力は間違いなく一流だと思うし、言動を見ても
面白い人柄だ。
横浜スタジアムのライトスタンドで、頭上を超えて行った
場外ホームランを生で見た。
生観戦した中では清原や田中幸雄に並ぶ凄い本塁打だった。

だが松井はずっと周囲の操り人形にされてたような気がして
本当に悔いのない野球人生を送れたのかなと思ってしまう。

ヤンキースタジアムで引退セレモニーが行われてた。
幸せそうな顔してた。
これでよかったのかな。
20年以上松井を見続けて、ようやく松井に納得した気分。

江夏豊がMLB挑戦するとき「帰ってきたときにはたった一言、
おつかれ、それだけ言ってやってください」と挨拶した。
今その言葉を松井に使わせてもらいたい。
松井秀喜、お疲れ様でした。