人生の目標なんて大それたことを考えることすら面倒なのだけれども、
強いてひとつあげるとしたら「一戸建て」だなと、ふと思い立った。
今住んでる場所は海の見える郊外の家。
海の近くは心地いいもの。スカパーのアンテナが潮風のせいで一年で
錆び錆びになったとしても、この眺めはいいものだ。富士山も見えるし。


でもこの家には僕の部屋がありません。元々、子供たちが学校を出て独立
したということで両親が小さいところに引っ越した。
そんなところに一人暮しに頓挫した僕が帰って来たもので、今は物置のように
使われてる和室の片隅に住まわせてもらってる。
部屋が閉じきらず音が丸聞こえなので、気軽にいたずら電話もかけれない。


引っ越しの経験はけっこうある方で、今住んでる家で10軒目。姉なぞもう20軒
以上の家を移り住んでるはず。
3畳風呂なしトイレ共同とか、自転車も通れないような路地から入る北向きの
部屋とか、いろんなところに移り住んできた。どこも住めば都です。


しかし、最近なんとなく近所をうろついてたら、このへんは田舎なものでけっこう
あるんだね一戸建てが。
門があって、狭いながらも庭があって花が咲いてて、家の中にはたぶん一人きりに
なれる場所もあれば、家族みんなで広々と和める場所もあるのでしょう。
外から眺めるだけで羨ましくなってくる。
クリスマスの日にはきっと七面鳥を親子揃って食べてて、僕は寂しくその姿を
窓から覗いているのでしょう。いやちょっと妄想走りすぎ。


僕も小学校に入るまでは一戸建てに住んでた。
父は偉大なもので20代のうちに小さいながらも自分が社長の会社を立ち上げ、
マイホームまで建てた。
こじんまりした庭に犬を飼って、その犬と同じくらいの背丈だった3才の僕は
庭の芝生の上で転がりまわって犬と抱き合ったものだ。
かすかながら記憶が残ってる。
残念ながら第二次オイルショック不況の影響で父の会社は倒産し、一戸建ては
手放すことに。


両親ももう60近いのでこれから一戸建てを建てることは不可能だろう。
姉たちも遠く離れて一人暮しをしてるし、やがては嫁いで行く人たち。
親のためにも自分のためにも、姉たちが帰省してくる場所を作るためにも、
いつか産まれて来る僕の子供たちのためにも、やはり僕が一戸建てを建てることが
理想じゃないですか。
Windows98をXPに買い換えることすらできない貧乏人が大きな夢を見すぎだとは
わかっているけれども。